本日から新たな文献を紹介していきます。
前回のように何回かに分けて紹介していきます。
Quiescent Haematopoietic Stem Cells Are Activated by IFN-gamma in Response to Chronic Infection
Abstract
リンパ球と好中球は、全身性の感染症によって急速に枯渇してしまう。骨髄系共通前駆細胞(CMP)やリンパ性共通前駆細胞(CLP)など造血システムの前駆細胞は、慢性炎症の間、免疫細胞の産生を増加させることによって恒常性の回復と維持を行っているが、このプロセスに造血幹細胞(HSC)がどのように関与するかはあまり知られていない。今回我々は、in vivoにおけるマウスMycobacterium avium感染モデルを用いて、感染中にong-term repopulating HSCs増殖割合が増加すること、そしてこの反応はinterferon-α (IFN-α)伝達ではなく、 interferon-γ (IFN-γ)伝達に応答した反応であることを示す。したがって、慢性細菌感染症における造血反応は、中間造血前駆細胞のみならずlong-term repopulating HSCsも同様に関与している。INF-γはin vivoにおけるlong-term repopulating HSCs増殖を促進し、さらにINF-γ欠損マウスでは増殖率が低いことが分かり、これはベースのINF-γ濃度がHSC活性を調整していることを示している。これらの所見は、定常状態においても感染ストレス下においても、INF-γが造血中にHSCを制限する役割を担っていることを示している。我々の研究はHIV/AIDS、結核など慢性感染を有する患者における造血応答に関する理解をより深めるのに重要な役割を果たすだろう。
Main ---Vol1. Introduction---
・HSCのほとんどは静止期にあり、分化細胞を産生する必要がある場合のみ細胞周期に入る。
・ストレス下ではHSCが活性化されるが、この機序は不明。
・過去の研究では、慢性感染の場合、それに応答し骨髄原始前駆細胞の絶対数が増加することが分かっている。→KSL細胞追跡による研究。
・感染中にHSCに影響を与えるシグナル伝達分子などは不明。
→これを調査するために筆者らはマウスMycobacterium avium感染モデルを利用。
ナチュラルな微小環境を崩すことなくHSCを研究することが可能。
・M. aviumをマウスに静注→4週間で多数の感染症に罹患し脾臓は拡大。
・感染しても末梢血中のリンパ球、好中球、単球、好酸球および好塩基球の絶対数は安定したまま。
・感染後2週間での血小板数の減少と、感染後4週間でのCD4 +T細胞と顆粒球の増加に伴うB細胞の相対的減少のみ見られた。
・骨髄では、感染後2週間から4週間で顆粒球単球前駆細胞、共通骨髄前駆細胞、マクロファージ赤血球前駆細胞が消失し、共通リンパ前駆細胞が増加。
→MAC症の特徴であるT細胞媒介免疫応答
次回はFigure1以降の解説です。
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【文献紹介】静止期造血幹細胞は慢性炎症時にINF-γによって活性化される~その2~ - こりんの基礎医学研究日記