本日は昨日紹介した文献と同じ著者の別の文献(レビュー)になります。
長いので、前後編に分けることにしました。
Review Pflugers Arch, 468 (1), 13-22 Jan 2016
Hypoxia Regulates the Hematopoietic Stem Cell Niche
Abstract
成人の造血器官である骨髄は、生理学的に低酸素臓器である。従って、様々な生物学的酸素センサーとシグナル伝達カスケードが、生理的状態においても病理的状態においても骨髄造血システムの中で重要な役割を果たしている。低酸素誘導因子(HIF)は定常状態あるいはストレス性の低酸素状態において安定化される低酸素ストレスセンサータンパク質である。低酸素骨髄においては、HIFは造血幹細胞HSCとHSCニッチにおいて重要な役割を果たしている。HIFの顆粒シグナルは、細胞自律性メカニズムと非自律性メカニズムの両方を駆使して、HSC休止期を維持し、生存させ、代謝恒常性を維持する。白血病幹細胞はこの繊細な低酸素完治メカニズムを乗っ取り、自身の自己複製能を維持し、正常酸素分圧下でも疾患の進行と薬剤耐性を促進する。このレビューでは、低酸素骨髄における成人HSCと白血病細胞、そしてそのニッチのHIFを介した酸素感知メカニズムに焦点をあてる。
内容まとめ
【Introduction】
・骨髄の酸素分圧pO2は多臓器と比較して非常に低い
・健常者の骨髄穿刺液の平均pO2は54.9 mmHg/平均SpO2 87.5%
・マウス骨髄平均pO2は18 mmHg
・HSCの維持と髄内造血は低酸素環境で起こる
→その方法とは?
【HSCに対する低酸素の影響】
・HSCが存在する環境の酸素分圧を感知するセンサーとしての役割を低酸素誘導因子HIFが担っている
・マウスにおいてはHIF-1αがHSCを休止期に保つ反応を媒介していることが示唆されている
・低酸素下では多くのHSCがG0期に。
・低酸素状態がHSCのHIF-1αを安定化しHSC維持につながる
・HIF-1αノックアウトマウスのHSCを移植すると…
末梢血:キメリズム(生着率)高い
骨髄:キメリズム(生着率)低い
・HIF-1αはHSCにおける細胞休止(replicative senescence in HSCs)を阻害ししていることに起因
・HIF-1αは加齢やBMTなど様々なストレスに対する耐性をコントロールしている
【低酸素シグナルによるHSCの代謝調整】
・ROS過剰産制が起こると…アポトーシス・細胞周期活性化→HSC喪失につながる
・骨髄は低酸素→ROSの有害な影響からHSCを守る
・定常状態での休止期HSCは前駆細胞と比較しミトコンドリアが少ない。
※解糖系…嫌気条件下で2つのATPを得る
※ミトコンドリア経路…好気条件下TCA回路を開始38のATPを産生
・ミトコンドリアがないと…HSCはROSによる障害を受けないかもしれないがエネルギー産生が不十分かも
・HIFはこれをうまく調節している可能性がある
・骨髄低酸素状態はHFI-1αを介して血管内増殖因子A(VEGFA)を誘導する
後編はこちら↓
【文献紹介】低酸素による造血幹細胞ニッチの調節~後編~ - こりんの基礎医学研究日記