CRISPR関連の文献を紹介してみます。先天性好中球減少症を遺伝子編集にて治療するというものです。
Dissecting ELANE neutropenia pathogenicity by human HSC gene editing
重症先天性好中球減少症(SCN)とは
末梢血好中球絶対数が500/ml未満(多くは200/ml未満)の慢性好中球減少,骨髄像での前骨髄球と骨髄球の段階での成熟障害,重症反復性細菌感染症を臨床的特徴とする。G-CSF投与で好中球減少と臨床症状は改善するが,一部の症例では骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)に進展することが知られている。
(中略)
本疾患は種々の遺伝子変異によって重症慢性好中球減少が認められる疾患群である。現在までに好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE),HAX1,GFI1,G6PT1, G6PC3変異などが同定されており,本邦ではELANE変異が約75%,HAX1が約20%の頻度である。責任遺伝子と病因・病態についての詳細は不明である。
上記の通り、SCNの主な原因遺伝子としてELANEが挙げられる。(約半分の症例で認められる) ELANEの変異が起こると、好中球の成熟が妨げられてしまう。これを遺伝子編集で治療することを試みたのが今回の論文です。
筆者らはCRISPR/Cas9システムを用いて、マウス造血幹細胞のELANE遺伝子エクソン部分を編集することで好中球の停止を防いだり、逆に再現したりすることができたと報告しています。
これまでにも同様の試みはされてきましたが、同疾患のモデルマウスは作ることができていませんでした。
これが可能となると、例えば病気の人の造血幹細胞を取り出し、遺伝子編集を施し、またもとに戻す(自家移植)という治療が可能となります。
これが可能となると他の疾患でも同様に治療できるものも出てくるかもしれません