最近Scienceに掲載された文献のメモ。
RESEARCH ARTICLECELL BIOLOGY
Differential H4K16ac levels ensure a balance between quiescence and activation in hematopoietic stem cells
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Introduction
- 造血幹細胞(HSC)は多分化能と自己複製能を持ち、白血球や赤血球などすべての種類の血球に分化できる。放射線照射によってHSCが死滅したマウスに移植すると、多系の血球増殖を再構築することができる。
- HSCコンパートメントの中にも複数のタイプがある。分化能や自己複製能などによって分かれている。
- 骨髄微小環境やニッチから産生される細胞外因子が主にこのHSC不均一性に関与しているのではないかと考えられてきたが、近年それだけではないことが分かった。→→→cell-autonomous factors(細胞内自律因子)がおのおののHSCの特徴に関与している可能性が示唆される。
- HSCは初期の段階で細胞運命がある程度決定され、分裂して娘細胞になった後もその特徴が保持されると考えられる。この細胞運命決定にエピジェネティックな修飾が大きく関与していると考えられる。
- MOF (males absent on the first; also known as KAT8 or MYST1)
(※ヒストンH4リシン16アセチルトランスフェラーゼhMOF)はヒストン修飾を担う因子の1つで、これまでの研究ですでにHSC機能維持に重要であることが分かっている。(Mof欠損マウスは重度貧血のため長期生存できなず、移植後も造血能を構築できない) - MOFのダウンレギュレーションは急性骨髄性白血病の特徴でもある。
- 今回の論文ではMOFをHSC静止の重要な調節因子として特定し、これが調節するヒストンH4K16acレベルの変動がHSC不均一性促進に寄与することを報告する。
- MOFレベルが低下→表面マーカーCD93発現亜集団が増加→静止から活性化への糸口となる。
Result
- 静止状態のHSCはH4K16acレベルが高いことが実験からわかった。
Poly(I:C)を用いて野生型マウスから取り出したLSK+細胞に炎症刺激を与えるとMOF/H4K16acレベルが有意に減少した→HSCの増殖能活性化に関連。 - HSCの動態に関する研究は主に2つの因子によって制限されてきた。
①生きた細胞でも利用可能なマーカーがなかった。
②ヒトでも利用可能なマーカーがなかった。
そこで筆者らはマーカーを検索→CD93を同定。ヒトでも利用可能。クラスター分析から導き出した。 - CD93+HSCではCD93-HSCと比較して、細胞周期/有糸分裂・細胞周期容量の増加・DNA修復・代謝に関連する遺伝子がアップレギュレートされていた。
- CD93+HSC、HSC活性化の指標であるmRNAスプライシングが増加している徴候がみられた。
- HSCが静止状態にあるか活性化した状態にあるかは、2者択一ではなく連続的な変化の中にある。CD93+は活性化に向かう細胞の特徴であり、CD93+集団はMof+/-マウスでより豊富。
- CD93の発現の程度はH4K16acレベルとHSC静止期維持の間の分子的リンクを反映している。
- CD93+HSCは恒常性の障害に対してより早く反応できる。