Hu T, Kitano A, Luu V, Dawson B, Hoegenauer KA, Lee BH, Nakada D.
Bmi1 Suppresses Adipogenesis in the Hematopoietic Stem Cell Niche.
Stem Cell Reports. 2019 Sep 10;13(3):545-558.
- 幹細胞因子(SCF)とCXCケモカインリガンド12(CXCL12)を高度に発現する骨髄間質細胞(BMSC)は骨髄ニッチの構成要素として非常に重要である。
- BMSCが分泌する物質などに関しては十分にわかっているが、BMSCの細胞運命決定に関与する転写因子などは十分にわかっていない。
- BMI1はHSCを調節するポリコームグループタンパク質の1つ。
- 内因性にも外因性にもHSC維持に寄与するが、外因性の関与のメカニズムは不明であった。
- 今回の文献では、BMSCにおいて、Bmi1がBMSC脂肪生成分化を抑制することにより、HSCを維持に寄与していることを示した。
- BMSCにおいてBmi1を欠損させると骨髄脂肪細胞が増加し、HSC静止と枯渇が誘発され、造血障害を生じた。
- BMI1は、抑制的なエピジェネティックマークであるヒストンH2Aのユビキチン化とH3リジン27のトリメチル化を保護することにより、BMSCの複数の発生プログラムを抑制していることがわかった。
- Bmi1はBMSC細胞運命決定の重要な調節因子であり、骨髄脂肪生成を抑制することで骨髄ニッチとしてHSCを支持する。
【ブログ筆者補足メモ】
BMSC
血管周囲HSCニッチ構成要素の1つで血管内皮細胞に属する。BMSCを欠損させるとHSCの数が減少することが分かっており、HSC維持に重要な役割を果たすことが分かっている。(Mendez-Ferrer et al., 2010, Omatsu et al., 2010) またその後の研究により、これはSCFやCXCL12などをBMSCが分泌していることによるということがわかった。また、BMSC特異的に発現しているFoxc1が、HSC維持に悪影響をもたらす脂肪細胞の蓄積を防いでいることも後にわかった。(Omatsu et al., 2014)
Bmi1
抑制的ヒストン修飾H2Aユビキチン化を触媒するポリコーム抑制複合体1(PRC1)の成分の1つ。(Schuettengruber et al., 2017)
Bmi1はp16ink4aとp19Arfの抑制を介して、それぞれ細胞増殖抑制と細胞死増加の抑制につながっており、成体造血幹細胞(HSC)の発生・維持に不可欠とされている。Park Ik. et al. の報告によるとBmiをKOすると胎児HSの数は保たれるのに対し、成体HSCは自己複製が減少し数が減ってしまうとのこと。(Park Ik. et al., 2003)