こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

医療統計:タモキシフェンと乳がん

医療統計にかんするセミナーのメモです。

タモキシフェンと乳がん

  • 乳がん治療において術後の化学療法がしばしば行われる。
  • 中でもホルモン剤の1つであるタモキシフェンは昔から用いられてきた。
    タモキシフェンは乳がん再発を予防するか?
    f:id:teicoplanin:20210422133255j:plainAbe O. Breast Cancer 1994; 1: 1-9.
  • 帰無仮説:タモキシフェン投与と乳がん再発は無関係
  • Z検定を用いて検定(χ二乗検定はZを二乗しているものでありp値はZ検定と全く同じとなる)
    →p値=0.046 有意差あり
    →次に考えることは…モキシフェンはどれくらい効果的なのか?
     (p値だけでは「どれくらい」という評価はできない
    )
  • リスク差を計算してみると…(計算はここでは割愛)
    再発割合の差(リスク差)=-0.0343
    乳がん術後にTAMを投与されると、投与されない場合に比べて再発リスクが約3.4%減少
  • NNT=1つのイベント発生を予防するのに治療しなければならない患者数
    を計算してみると…
    (値が小さいほど治療法が効果的であることを示している)
    NNT=1/リスク差=1/0.0343=29.2
    →30人の乳がん術後患者にTAMを投与すれば1人の患者の再発を防ぐことができる。
  • リスク比を計算してみると…(計算はここでは割愛)
    再発割合の比=0.149/0.184=0.81
    乳がん術後にTAMを投与されると、投与されない場合に比べて再発リスクが4/5になる。
  • タモキシフェンは乳がんに有効か?様々な指標で評価。
    ★治療効果の点推定値と95%信頼区間
     リスク差:-0.034 (-0.068, -0.0006)
     NNT:29.2 (15, 1667)
     リスク比:0.81 (0.66, 0.99)
     相対リスク減少割合:19% (1%, 34%)