こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】補体がマウス血清誘発性hRBC吸着を助ける

Chen B, Fan W, Zou J, et al.

Complement Depletion Improves Human Red Blood Cell Reconstitution in Immunodeficient Mice. 

Stem Cell Reports. 2017;9(4):1034-1042. doi:10.1016/j.stemcr.2017.08.018

 

我々は、ヒト赤血球(hRBCs)は、免疫不全マウスに移植するとマクロファージによる強力な拒絶反応にあうことを以前に示した(すぐに赤血球は死んでしまう)。今回の研究では、マウス血清が、ヒト赤血球のマウス食細胞への接着を誘発することを発見した。これにはマクロファージなどの「プロフェッショナル」食細胞と、その近傍に存在する上皮細胞や繊維芽細胞などの「ノンプロフェッショナル」食細胞の両方が含まれる。そして補体がこのマウス血清誘発性hRBC吸着を助けることが分かった。コブラ毒中の成分であるコブラ毒因子(CVF)処理によってる補体を消耗させたNOD/SCIDマウスではhRBCの生存は確認できなかったのに対し、クロドロン酸リポソームを用いてマクロファージを除去したマウスにCVF処理を行うとhRBCの生存期間を優位に延長させた。この処理はまた、ヒトCD34+細胞をマウスに移植した際の赤血球再構築能を向上させた。これらのデータは、マクロファージによる赤血球拒絶機構にかかせない補体が、好中球などほかのタイプの食細胞の赤血球拒絶にも関与していることを示している。