抄読会で聞いたことのまとめ
Shen, B., Tasdogan, A., Ubellacker, J.M. et al.
A mechanosensitive peri-arteriolar niche for osteogenesis and lymphopoiesis.
Nature 591, 438–444 (2021). https://doi.org/10.1038/s41586-021-03298-5
- 造血幹細胞は骨髄Nicheの中で維持されている。
- Niche細胞はLeptin receptor陽性(LEPR+)であるのが特徴の1つ。
- Osteolectin陽性(Oln+)かどうかでさらにNiche細胞を区別できるのはないか?と筆者らは考え実験・調査。
- LEPR+細胞のうちOln+細胞は16%程度で細動脈周囲と類洞毛細血管周囲に主に分布している。
- LEPR+Oln+細胞は骨形成細胞への分化能を持っている。2か月以内には消失(=分化)してしまうことが実験からわかり、また骨折後に増加することが分かった。
→骨の再生に貢献している。 - 動脈周囲のOln+細胞はリンパ系前駆細胞のNicheを形成している可能性がある。
- 加齢に伴う変化は?
→加齢でもLEPR+細胞はあまり変わらない一方でOln+細胞は加齢に伴い減少。
加齢に伴ってHSC%やMPP%は増加しているにもかかわらずCLP%は減少する。
→加齢に伴う細動脈周辺のOln+減少が、加齢に伴うCLP減少に関与しているかもしれない。 - リステリア菌を感染させるとB細胞・T細胞が通常増加する。しかしSCF KOマウス(Oln細胞で特異的にSCFを欠損させる)ではこの効果が減弱。細菌数もKOマウスでは増加。Oln細胞は急性感染後のリンパ球増加と細菌数減少に関与しているのではないか。
- 運動による免疫細胞活性化についても検証。マウスに適度な運動をさせると骨密度や皮質骨の厚さが増加。また運動させたマウスではLEPR+Oln+細胞が増加し、CLPが増加している。(HSCやMPPなどは運動の有無によって変化は見られず)
→適度な運動負荷が細動脈周囲のNicheを増加させている可能性がある。 - マウスの後ろ足を吊り上げて負荷を減少させてみる。
→骨密度や骨皮質、CLPが減少。
→細動脈周囲のNiche維持には機械的負荷が必要である可能性が示唆される。 - Oln+細胞ではPiezo1が発現している。Olin+細胞特異的にPiezo1を欠損させると圧力負荷に反応しなくなる。またPiezo1を欠損させるとリステリア急性感染後の反応が悪化し、細菌数が増加する。
- 機械的刺激は細動脈周囲のNiche維持を制御する。
まとめ
- LEPR+は細動脈と類洞毛細血管の2種類の血管に隣接して存在。
- それぞれの血管に隣接している細胞はOlnの発現でくべる可能。
LEPR+Oln- 脂肪細胞へ分化
LEPR+Oln+ 骨芽細胞へ分化 →→→CLP nicheを形成しているのではないか? - Oln+細胞はPiezo1を発現しており運動負荷によってOln+細胞増加し、これがCLP増加に関与している。
- 加齢によるCLP減少は加齢によるOln+減少によるものの可能性がある。
- 運動負荷や加齢がOln+細胞を介してリンパ球造血に関与している。
この論文は以下のブログにも取り上げられており、わかりやすいです。