こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

公衆衛生レクチャーで学んだこと⑤~研究デザインの組み方~

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。

 

さまざまな研究デザインの組み方・特徴

 ある1つの研究テーマを定め、そこから様々な臨床研究を組むことをシミュレーションしてみる。これを通して、様々な臨床研究の特徴を理解する。

 

 Research question

「運動習慣がある人は高血圧になりにくいのではないか?」

この research questionをもとに様々なタイプの臨床研究を組んでみることを考える。

 

Cross-sectional study 横断研究

クリニックを受診した高血圧患者を選び、運動習慣がある患者とない患者の2群に分け、血圧を比較する。

 

Case control study ケースコントロール研究

健診センターを受診した人の中から、高血圧の人と正常血圧の人を選ぶ。各群で運動習慣があるかないかを確認する。

 

Prospective cohort study 前向きコホート研究

(現時点で)外来を受診した高血圧でない患者を選び、運動習慣がある群とない群の2つに分け各群において(将来)高血圧が発症する確率を比較する。

 

Retrospective cohort study 後ろ向きコホート研究

(病院の診療録等を参考に)運動習慣がある人とない人を選び、各群において(現時点で)高血圧が発症していかどうかを比較する。

 

Randomized controlled trial ランダム化比較試験

企業や大学などの協力を得て高血圧でない健康成人を選び、運動を定期的にしてもらう群としない群の2軍にランダムに分ける。その後の高血圧発症率を比較する。

 

***Tips***

  • Cross-sectional studyやCase control studyはselection biasや交絡因子=confoundersを排除できないなどの問題がある。一歩で簡便で安価にできる。
  • Prospective cohortになると正確性は増すが、やはりselection biasなどを排除できない。ちなみProspectiveでもRetrospectiveでもcohort studyの場合は、「疾患の有無」ではなく「曝露=exposureの有無」で2群に分ける。Prospectiveは「現在→未来」に向けて検証を行ったもので、Retrospectiveは「過去→現在」に向けて検証を行ったもの。

 

どの研究デザインが適切?

  • 病院で働く医師は十分な睡眠をとれているか?
    →Cross-sectional study
  • 肺がんと喫煙の関係?
    →Case-control study
    ※肺がんの発症率はそれほど高いわけではなく前向き研究は不向き。現在では当然のものとなったこの関係はCase-control studyによって明らかとなった。
  • 外傷患者はせん妄を起こしやすいか?有病率とリスクファクター?
    →Prospective (or Retrospective) cohort study
  • 医師の言う「余命」は当たっている?
    →prospective cohort study