こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

公衆衛生レクチャーで学んだこと②~サンプルサイズの計算~

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。

 

サンプルサイズの計算

これは2群で比較する際のサンプルサイズの計算式です。

※サンプルサイズの計算は推測に過ぎないことに注意。

 

N in each group = f(α, β) x [{π1x(100-π1)+π2x(100-π2)}/(π1-π2)^2]

 

N: 各郡のサンプルサイズ

f(α, β): α=タイプIエラー=有意水準とβ=タイプⅡエラー(検出力は100-βの確率)をどのように設定するかによって変わる。

π1=標準治療での効果

π2=新規治療に臨む効果

 

例を見てみます。

 

2種類の鎮痛剤を比較する二重盲検の無作為ランダム化試験を組むことを考える。

鎮痛薬A: これまで使われてきた標準鎮痛薬。これは40%の人のには効果的でない。

鎮痛薬B: 新たな鎮痛薬。これの効果をRCTにて調べたい。効果的でない人が25%減少すれば、臨床的に使えるだろうと判断した。

検出力80%、有意水準5%とする。

 

これを参考にすると、

 

π1=標準治療での効果 鎮痛薬Aで効果が出ない人40%

π2=新規治療に臨む効果 上記が25%減少すれば有効と考えているため、

40-(40x0.25)=30

 

検出力80%、有意水準5%とすると、f(α, β)は早見表から算出できる。

 

f:id:teicoplanin:20201031140213j:image

※αとβはトレードオフの関係にある。 

 

 今回の場合はα=0.05, β=0.20なので7.85

公式に当てはめてみると、

N in each group=7.85x[{40x(100-40)+30x(100-30)}/(40-30)^2]
=7.85x{(2400+2100)/100}

353

つまり各郡当たり353人必要なので、全体では353x2=706人必要となる。

 

ここで例えば検出力と有意水準を変えてみるとする。

検出力90%、有意水準1%とすると、α=0.01, β=0.10なので14.9

これを公式に当てはめると、

N in each group=14.9x[{40x(100-40)+30x(100-30)}/(40-30)^2]
=14.9x{(2400+2100)/100}

670

 つまり各郡当たり670人必要なので、全体では670x2=1340人必要となる。

 

※研究デザインによってもサンプルサイズの計算方法は異なってくる。