こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】ヒト初期胚におけるHSCの強力な自己複製能

文献紹介です。今回はAbstractのみ、次回本文を紹介したいと思います。

 

Ivanovs A, et al.

Vast Self-Renewal Potential of Human AGM Region HSCs Dramatically Declines in the Umbilical Cord Blood. Stem Cell Reports.

2020 Oct 13;15(4):811-816.

 

造血幹細胞(HSC)は、カーネギーステージ(CS)に大動脈・性腺・中腎領域(aorta-gonad-mesonephros region ; AGM領域)から発生する。過去の文献で我々は、このHSCは少なくとも300個のHSC娘細胞を生成すると報告したが、その実際の数は明らかでなかった。今回我々は、単一のAGM領域で600-1600個の機能的娘HSC細胞を得られることを発見した。CS17肝において、肝臓コロニー形成の後に自己複製能が減弱するという興味深い現象を確認した。臨床的観点から、長期造血再構築能はHSCの自己複製能に依存していると考えられる。AGMにおけるHSCと比較し、臍帯血におけるHSCの自己複製能が大きく減弱するということを今回量的に提示する。初期ヒト胚におけるHSCが有する多大な潜在的再生能を十分に理解することで、多能性幹細胞から臨床的に有用なHSCを生成する新たな方法を構築することができよう。