ケラチンに関する文献紹介です。
ケラチンに関する概要は昨日の記事↓
Lim HYG, et al.
Keratins are asymmetrically inherited fate determinants in the mammalian embryo.
Nature. 2020 Sep;585(7825):404-409.
- 一般的に、発生の過程において、Morula=桑実胚ごろに細胞運命が決定するとされている。しかし実はもっと早く決定するのでは?というのが今回の論文。
- F-actinや微小管といった他の細胞骨格成分は、8細胞期においては均一に分布しているのに対して、ケラチンは分布が偏っている=極性がある。
- マウスでも人でもこの極性は確認でき、また8細胞期から16細胞期に分裂するとき、8細胞期時点で外側に位置していたケラチン陽性細胞は、分裂時にやはり外側に分布する。(分裂したもう片方の娘細胞=ケラチンを含んでいない方の娘細胞は胚の内側に分布する。)
- ケラチン陽性細胞にサイトカラシンBやPARD6B KDを注入するとケラチン集簇はなくなる。
- ケラチン陽性細胞では対称分裂を規定するPARD6B遺伝子発現が亢進。
- ケラチン陽性細胞ではトロフォブラストなど重要なマーカーが発現しており、逆にNanogなど発現が低下している細胞も見られる。
→やはり8細胞くらいから極性が見られている。 - 4細胞期からその予兆があるのでは?
- ケラチンの局在があまり見られない4細胞期でBAF155染色を実施。4細胞期の段階で植物極側の1個の細胞=Vegetal cellでBAF155は特異的に発現。8細胞期となるとき、その細胞を軸に栄養外胚葉への運命が決定されている。
- まだ1細胞の段階でBAF155のsiRNA=BAF155を阻害するものを投与→ケラチンは4細胞期以降でも確認できず。
→ケラチンを誘導するタンパク質としてBAF155が重要である可能性がある。
【まとめ】
- 4細胞期には既にBAF155の発現により栄養外胚葉への運命が決定している。
- 8細胞期にはケラチンによる局在の変化が起こり、明確な細胞運命決定が起こる。
- 桑実胚に行くに従いCDX2などのTB遺伝子増幅。(この点については上記では述べておらず。)