先日、70代の女性の方が膝関節痛・腫脹のため、救急外来を受診されました。両側共に人工膝関節置換術を受けており、その日痛みが出ていたのは右側でした。
診断と疼痛軽減のため、関節穿刺を行いましたが、液体は引けませんでした。
後日、整形外科医より人工膝関節置換術後の関節穿刺は、禁忌とまでは言わないが、感染リスクの面からよほどのことがない限りしない方がよい、と注意を受けました。
確かに関節は感染に非常に弱いイメージですが、禁忌という認識はありませんでした。その後もさまざまな英語・日本語の文献を調べましたが、どれを見ても少なくとも「禁忌」とはされておらず、人工膝関節であっても「感染を疑ったら関節穿刺を施行する」と記載されているのみで、どの程度ハードルを上げるべきものなのか書かれている者は見つかりませんでした。
他の整形外科医に聞いてみたところ、やはり、「禁忌ではないが、感染してしまうと高確率で手術となり、そうなると長期臥床を余儀なくされるため、絶対に膿がたまっているような状況でなければ、穿刺は控えるのが賢明」とのことでした。
確かに人工関節置換後の感染について調べてみると、今日の臨床サポートによれば、
「発症より3週間以内で、インプラントが安定しており、軟部組織の状態が良好で、培養結果が陰性の場合には保存療法が可能な場合もあるが、多くは手術療法を行う。」
と書かれています。すなわち、やはり多くは手術になるようです。
あまり文献には書かれていませんが、重要な知識ですね。。
人工膝関節で、そんなに明らかに感染しているのであれば、整形外科へのコンサルト・入院orフォローは必須ですし、そうなると穿刺も整形外科に任せた方がいいかもしれません。なので、人工膝関節置換術後の関節穿刺は(非整形外科医)は原則禁止!と覚えておきたいと思います。
ちなみに整形外科医から、人工関節に傷がつくと耐用年数も短くなってしまう、と加えて注意を受けました。18G針でつつく程度で耐用年数が1年も2年も短くなるだろうか…という気もしますが、そのように言われたので、心に留めておきたいと思います。