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【文献紹介】アデノウイルスベクター筋注を用いた低ホスファターゼ症の治療~その1~ - こりんの基礎医学研究日記
Treatment of hypophosphatasia by muscle-directed expression of bone-targeted alkaline phosphatase via self-complementary AAV8 vector
Results
①MCKプロモーターによる筋局所的トランスダクション
・MCK(=muscle creatine kinase; 筋肉特異的)をプロモーターとしてEGFPが発現するような配列を作成。これを様々な細胞にトランスダクションすると…
→筋肉細胞(C2C12=C3Hマウスからの筋芽細胞様細胞株)でのみEGFPが発現することを確認。
・scAAV8-MCK-EGFPをマウスに筋注射→14日後観察→EGFP発現が骨格筋・心筋でのみ確認された。
②scAAV8-MCK-TNALP-D 10 –をマウスに注射すると生存期間が延長!
・scAVV8-MCK-TNALP-D 10(2.5×10 12ベクトルゲノム(vg)/ body)を生後1日の新生児マウスの大腿四頭筋(両側)に筋注。
→その後のTNALP-D 10レベルとALP活性を解析。
・1U/ ml以上の血漿ALP→Akp2 - / -マウスの生存延長が可能であることが分かっている。
・生後30日目の未治療Akp2 - / -マウスの血漿ALPは0.05 U / ml(n = 1)。
・scAAV8-MCK-TNALP-D 10 –治療後Akp2 - / -(TNALP-D 10)マウス(n = 9)では…Akp2 + / +(野生型)の10倍以上!
…4.92±1.72U/ml(生後30日)
・未治療マウスと比較して有意に生存期間が延長した。
③治療後Akp2 - / -は正常身体活動レベル
・未治療マウスは生後6-8日で成長障害、生後3週間以内に死亡。
・治療後マウスとWTマウスで総移動距離に有意差なし。(1分あたり何cm進めるか)
④筋注後のALPレベル
・治療後マウスのベクター分布とALP活性を骨格筋、心臓、脾臓、肝臓などの8臓器で検査。
・ベクターコピー数は骨格筋>心臓>肝臓の順に多く、ALP`活性は骨格筋>骨>生殖器の順に多い。(WT
では、ALP活性は腎臓>骨>生殖器の順に多く、骨格筋ではほぼなし。)
・特に注射された筋肉部分で高濃度のALP検出。
⑤TNALP-D 10トランスダクション後マウスでは骨形成が改善
・90日後TNALP-D 10マウス(n = 9)とWTマウス(n = 5)で、前脚、後脚、椎骨などの骨のX線撮影を実施。
・未治療マウスは出生時には正常様、しかし生後20日目に大腿骨の短縮や鼻骨椎間隔の拡大など明らかな変化あり。
・治療後マウス、WTマウスは正常骨格を維持。
・生後90日では治療後マウスで大腿骨が有意に短縮、尾骨椎間隔・椎体間隔が有意に拡大。
→治療により骨形成は改善したものの、長管骨の成長には制限あり?
⑥マイクロCT解析:治療後マウスでの石灰化はやはり不十分
・生後90日治療後マウスを観察→骨幹部では正常骨形成
・しかし骨端骨では皮質骨の欠如や骨端の変形などが見られ、骨形成は不十分であった。
・また低石灰化あり(骨密度、骨体積/組織体積がWTマウスと比較して有意に低い)。
⑦治療後マウス骨の組織・病理学的観察
・治療後マウス大腿骨で、異常な軟骨細胞の増殖と不規則な細胞配置が見られた。
・未治療マウス大腿骨ではALPシグナル見られず、類骨様組織の拡大と異常な軟骨細胞の増殖あり。
・治療後マウスでは、成長板と骨膜外膜にALPシグナルを認めたが、正常よりは低かった。
・治療によってAkp2 - / -マウスでも1U/mlの血漿ALP活性を得ることができ、これにより生存期間延長も可能となったが、大腿骨構造を完全に正常にするには不十分であることが分かった。
次回はDiscussionです。