先日、新生児マウスへの移植を行った話を書きましたが、残念ながら移植後の新生児マウスはその後死亡してしまい残念な気持ちです。
移植技術が未熟だからこうなっているのか…わかりませんが、また次の実験を頑張っていきたいと思います。
さて、本日は再び文献紹介です。
肺線維症に関するものです。Abstract+ちょこっと解説です。
Cellで出たばかりの論文です。
Progressive Pulmonary Fibrosis Is Caused by Elevated Mechanical Tension on Alveolar Stem Cells
Highlights
- 肺胞再生障害により、肺胞の張力の持続的上昇につながる。
- 機械的張力の上昇は、肺胞幹細胞におけるTGF-βシグナル伝達ループの活性化につながる。
- 肺胞への機械的張力の影響は均一ではない。
- 機械的張力上昇によるTGF-βシグナル伝達活性化は線維化進行に不可欠である。
Summary
線維化は多くの臓器で起きえ、臓器不全の原因にもなる。肺に起きる線維化のもっとも多いタイプとして特発性肺線維症があるが、これは末梢から線維化が始まり、徐々に中枢へと進行し、最終的には呼吸不全を引き起こしてしまう。この背景、末梢から中枢へ線維化が進んでいくことの機序はあまりよくわかっていない。今回我々は、肺胞幹細胞(AT2)の中のCdc42の機能が失われることで、この末梢から中枢への線維化進行が起きていることを発見した。さらに、Cdc-null AT2は、肺全的後マウスにおいても未治療高齢マウスにおいても新しい肺胞を再生することができず、その結果、AT2細胞を高い機械的張力にさらすことになってしまうことが分かった。そしてこの、高い機械的張力がAT2細胞におけるTGF-β シグナル伝達ループを活性化し、末梢から中枢への線維化進行につながることを突き止めた。今回の我々の研究は、肺胞再生障害、機械的張力、そして進行性の肺線維化の間の関係性を明らかにしている。
私見
間質性肺炎、肺線維症は臨床医時代によく見ました。なんとなく画像の特徴はNSIPパターン、IPFパターンなどいつかありますが、なんとなく全体として肺底部(の特に背側)から線維化が進行していくイメージです。
なぜだかは確かにあまり考えたことがなかったですが、「重力が関与しているのかなー」となんとなく思っていた程度です。Cdc42機能が失われることによっておこるとのこですが、それであればこれを補えば線維化を予防できるかもしれませんが、これは進行をとめるだけなのか、それとも既に線維化してしまった肺胞も再生できるのか、、、など気になります。ぜひ後者だったらいいのですが…。
今回は以上です。