こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【専門医レポート】肺腫瘍血栓微小血管症(PTTM)

総合内科専門医レポートを書くに当たり、勉強した内容や調べた内容などのメモです。備忘録的な感じです。

 

PTTMは診断が難しく、発症から死亡までが非常に急速であるため、剖検で初めて診断がつく疾患の定番のような気がします。

 

★肺腫瘍血栓微小血管症(PTTM= pulmonary tumor thrombotic microangiopathy)

 

・PTTMはvon Herbay らが提唱した疾患概念であり、主に胃癌などの腺癌に関連しているとされている。(1)

・肺動脈末梢の腫瘍塞栓を契機に局所的な凝固亢進が惹起され、病理学的に血栓閉塞の器質化、小動脈内膜の線維細胞性肥厚を呈し、臨床的には低酸素血症や肺高血圧症を呈するとされている。(1,2)

・剖検例の0.9~3.3% に認められると報告されている。(1,2)

・Urugaらは酸素開始からの中央生存期間は9日と報告しており、発症や入院から数日で死亡する例も多いため、生前の確定診断は非常に困難である。(3)

・石黒らは化学療法にて救命しえたPTTMの1例を報告しているが、1急速な経過をたどることから非常に稀な例と考えられる。(3)

・安井らが報告している早期胃癌によるPTTMの1例においても早期にPTTMを疑い第2病日より原発不明眼に準じた化学療法を開始しているも翌日には患者は死亡している。(2)

・主要肺動脈に塞栓がなく過凝固の状態に付随した急性の呼吸状態の悪化が癌患者にみられた場合、臨床医はPTTMを疑うべきではあるが、患者の救命のためには、治療法確立のためさらなる研究が必要と考えられる。

1.石黒卓ら. 日呼吸会誌. 2011; 49(9).681-687.
2.安井秀樹ら. 日呼吸会誌. 2011; 49(2).122-127.
3.Hironori Uruga, et al. Intern Med.2013;52:1317-1323.