こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【専門医レポート】下垂体卒中

総合内科専門医レポートを書くに当たり、勉強した内容や調べた内容などのメモです。備忘録的な感じです。

 

★下垂体卒中

 

・下垂体卒中は、有病率6.2/10万、罹患率0.17/10万人年(下垂体腺腫患者の0.6-10.5%に発症)と稀ではあるが、致死的な疾患であり、また手術による緊急除圧が必要な症例もあり、注意が必要である。(1)

・下垂体卒中で初めて下垂体腺腫の診断に至った例が80%以上に上るとされ、下垂体腺腫の指摘がない患者でも鑑別に挙げる必要がある。(2)

・主な症状としては、頭痛が70-80%程度に見られるが、視野障害49%、視力障害68%、脳神経麻痺48%などが挙げられる。(3)

・通常下垂体腺腫などの下垂体疾患における視野障害は両耳側半盲が一般的であるが、筆者らは両鼻側視野欠損をの下垂体卒中の一例を経験し、症例報告をした。この機序について解説する。

・下垂体腺腫に伴う両耳側半盲は非常に珍しく、医中誌では「下垂体」「両鼻側半盲」で検索すると3件、PubMedで ”pituitary” ”binasal defect”と検索すると4件がヒットするのみである。この機序について、桜庭らは「下垂体腫瘍により押し上げられた視神経(視交叉)が、両側前大脳動脈により外側を圧迫され、両鼻側半盲を示した。」と説明している。(4)

・術中所見でも両側前大脳動脈による視神経圧排は確認されており、筆者らの症例においてもこれが視野障害につながったと考えられる。

・さらに動脈硬化を有する場合、(血管の弾性が失われるため)よりこれは起きやすくなるとされており、高齢である当症例においてはこの要素もあったと考えられる。(4)


1. Boellis A, et al. Insights Imaging. 2014; 5(6):753-762.
2. Albani A, et al. Int J Endocrinol. 2016; 7951536.
3. Briet C, et al. Endocr Rev. 2015; 36(6):622-45.
4. Sakuraba F, et al. J Nati Def Med Coll. 2013; 38(2):156-158.