こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】iPS由来血小板輸血時のNK細胞応答

本日も文献紹介。最近話題となっているiPS由来の血小板についてです。

 

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iPSC-Derived Platelets Depleted of HLA Class I Are Inert to Anti-HLA Class I and Natural Killer Cell Immunity

Open AccessPublished:December 26, 2019

 

Abstract

human leukocyte antigen(ヒト白血球抗原) class I (HLA-I)を欠損させた血小板のEx vivo産生によって、HLA-I不適合輸血による血小板輸血不応性を回避することが可能となるかもしれない。今回、我々は、遺伝子操作を用い、臨床的に利用可能なimMKCL systemを利用し、ヒトiPS細胞からHLA-Iを欠損させた血小板(HLA-KO iPLATs)を作成した。そして、そのHLA-Iダウンレギュレーションを拒否するナチュラルキラー(NK)細胞を含む免疫学的特徴を評価した。HLA-KO iPLATsは全てのHLAを欠いていたが、In vitroでヒトNK細胞による細胞障害正反応を誘発せず、ヒトNK細胞により再構成されたマウスであるHu-NK-MSTRG miceにおいては、輸血の際に通常のPLATsと同等の循環を示した。さらに、HLA-KO iPLATsはHu-NK-MISTRG miceの同種免疫血小板輸血抵抗性モデルにおいても正常に循環した。血小板上にNK細胞活性化リガンドが欠如していることによって、NK細胞反応応答回避に関与しているのかもしれない。今回の研究は、血小板特有の非免疫学的特徴を明らかにし、HLA-KO iPLATsの臨床応用に役立つことであろう。

 

内容めとめ

・血小板が減少する疾患の患者にとって血小板輸血は非常に重要。

・しかし現在血小板の供給は主に輸血頼み。血小板の寿命が4-5日と短いため需給バランスを保つのが難しい。

・また血小板輸血を受けた患者の5-15%に同種免疫血小板輸血不応性(allo-PTR)が見られ、これはHLA-I抗原に対する抗体が産生されることによって主に起こる。

・iPSから作られる血小板はこれらの問題を解決するかもしれない。

・imMKCLから巨核前駆細胞株から血小板を作る方法が近年確立された。これまではHLAを有するものであったが、HLA欠損血小板を作ることでこれら不応性の問題を回避することを今回試みた。

・CRISPR / Cas9システムを用い、B2M遺伝子をノックアウト→これによりHLA-I発現のない血小板を作り出した(HLA-KO iPLAT)。

・HLA-KO iPLATとWT(野生型) iPLATは同等の凝固能を有する。

・次にHLA-KO iPLATとNK細胞を共培養→NK細胞の活性化は起きず。

・豊富なヒトNK細胞を発現するマウスを作製(Hu-NK-MSTRG)→これにHLA-KO iPLATを注入。

※ヒト末梢血のNK細胞と同様の細胞傷害活性を有する

・HLA-KO iPLATとWT iPLATの循環能は変わらず。

・HLA-KO iPLATsが普遍的なHLA-I型血小板として使用できるかもしれない。

・HLA欠損血小板はNK細胞を活性化しない。