Natureの記事紹介です。Research記事ではないのですが、面白かったので紹介します。
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First complete model of the human embryo
- 生殖補助医療の改善や流産・先天性疾患予防には発生や胎児発育の正しい理解が重要だが、様々な倫理的・法的制約があり難しい。
- 学術研究においてはIn vitro培養の哺乳類胚モデル構築によってこの問題をクリアしようとしている。
- 近年Nature誌では、実験用dish内で自己発生するヒト初期胚に類似した特徴を有するヒト胚性幹細胞に関する2本の論文が発表された。
Yu, L. et al. Nature https://doi.org/10.1038/s41586-021-03356-y (2021).
Liu, X. et al. Nature https://doi.org/10.1038/s41586-021-03372-y (2021).
参考①:ウニの発生
※ウニは哺乳類ではなく棘皮動物ですが、発生過程は哺乳類に近く、高校生物で習うので参考に掲載。
参考②:カエルなど哺乳類の発生
(紹介記事の本文に戻る)
- 哺乳類の胚は最初の数日で分裂を終え、胚盤胞を形成。このときに内部細胞塊(ICM)と呼ばれる細胞クラスターができる。
- ICMは胚盤胞の発達に合わせてepiblastとhypoblastに分かれる。その後、着床し原腸陥入が起こる。
- 最初のIn vitroモデルは、マウス幹細胞を使用する培養細胞(blastoid)を用いて胚盤胞形成を再現する方法がとられた。しかしこれはヒトでは成功せず。着床後の胚をある程度再現することはできるが、着床前の状態の再現が難しく、栄養外胚葉やhypoblastなどを再現するのが難しかった。
- 新らに発表されたYu LやLiu Xらの研究ではこの点で大きな技術の進歩があった。お子には2つの鍵がある。
①人胚盤胞を代表する細胞の使用
②培養プロトコールの最適化 - Yu LらはES細胞、iPS細胞を利用(両者ともに胚盤胞のepiblast細胞と発達的に類似しており、栄養外胚葉およびhypoblastに関連する系統を生じさせることが可能)。一方でLiu Xらは線維芽細胞と呼ばれる成人皮膚細胞を再プログラムしてepiblast、栄養外胚葉、およびhypoblastの細胞と同様の遺伝子発現プロファイルを持つ細胞を含む混合細胞集団を形成するところから開始した。
→どちらもこれまでのモデルの欠点であった栄養外胚葉やhypoblastなどを再現できないという問題をクリア
a: Yu Lモデル
b: Liu Xモデル
- いずれも6-8日の培養で着床前のヒト胚盤胞に分子的に類似したBlastoidを作ることができた。
- 次に子宮着床を実験室内で再現することを試み、これも一部成功。
- また、先に述べたように培養条件最適化にも取り組んだ。
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