先日の抄読会で取り上げられた文献の紹介です。
今回は抄録の和訳+少し解説です。
Therapeutic Targeting of RNA Splicing Catalysis through Inhibition of Protein Arginine Methylation.
1.Abstract
2.RNAスプライシングとは?
RNAは、核内でDNAをもとにRNAポリメラーゼⅡによってまず作られるが、この段階ではまだ前駆体である。
以下の3つの過程を経て成熟mRNAとなり、核外へ出て翻訳=タンパク質を作るという流れになっている。
上記のRNAスプライシングの過程に問題が起きると白血病などの癌が生じてしまう(スプライシング因子をコードしている遺伝子に間違いが起こることによって、正しくスプライシングがされなくなってしまう)。
このため、その細胞の生存は野生型=正しくスプライシングが行われている細胞に依存している。
参考サイト:
3.タンパク質アルギニンメチル化酵素PRMT
解説があるサイト見つけました。
アルギニンは、タンパク質アルギニンメチル化酵素 (PRMT) ファミリーによって、モノメチル化あるいは対称または非対称にジメチル化されます。PRMTは、そのメチル化の仕方によって三つのタイプに分類されます。三つすべてのPRMTは、アルギニンをモノメチル化できます。モノメチル化されたアルギニンはさらにメチル化され、I型PRMTによって非対称性ジメチルアルギニンに、もしくはII型PRMTによって対称性ジメチルアルギニンになります。III型PRMTは、アルギニン残基のモノメチル化のみ行えます。リジン同様、アルギニンのメチル化の程度と局在は、転写活性に影響を及ぼします。
出典:
4.私見
PRMT阻害剤が種々の癌に効果的であるということはこれまでも言われたようですが、その機序などは不明であったようです。血液腫瘍・固形腫瘍含め新たな治療選択肢となるでしょうか。これだけ見るとスプライシング阻害の大きなデメリットはあまりないように見えますが、欠点はなんなのでしょうか。スプライシング自体が起こらないとそれはそれで何か問題が起きそうな気もしますが、そこは野生型スプライシングのみで頑張ってもらうのでしょうか…いつか臨床に出る日を待ちたいと思います。
本日は以上です。