マウスへの骨髄移植実験のため、いつもマウスに放射線照射を行っているのですが、照射量などに関して、疑問に思ったので、調べてみました。
マウスに対する放射線照射
分かりやすいページがありました。主に以下のページのポイント抽出です。
- 致死量未満の放射線は一時的な免疫抑制を招く。
- 完全な骨髄破壊は本来は死亡によってもらたされる。
- 線量率は様々な因子の影響を受ける。
ソースアクティビティ、X線ビームエネルギー、位置/距離、静止物か回転物か、減衰器/フィルターの存在- 照射に影響を与える因子
- 放射線源: X線はガンマ線よりも低い線量で済むことがある。
- マウス系統による違い: BALB/c と SCIDマウスは低い線量で良い。
- 週齢:
- 健康状態: 健康状態によって耐用線量が低下することがある。 (e.g. 感染、ストレス、低栄養、基礎疾患).
- 時間帯: 日内変動あり。
- 複数回の照射: C57BL/6 miceでは3-4時間間隔で2回の半占領を照射することによって放射線合併症が軽減される。
- BALB/c マウスは未知の常染色体劣性遺伝子座への影響により放射線感受性が高く、C57BL/6マウスと同じ線量照射には耐えられない。
- F1 hybrids from C57BL/6 x BALB/c crossesは、C57BL/6と同様の放射線耐性。
Relative radiosensitivity of mouse strains:
129S ≤ SJL ≤ C3H ≤ C57BL/6 <Typical Strain Dosage Ranges
Typical dose (cGy) C57BL/6 Complete myeloablation (lethal dose):
Single dose: 900-1100
Fractionated dose: 600 + 600 with 3-4 h interval
Partial myeloablation (sublethal dose):
Single dose of 350-600
BALB/c Complete myeloablation (lethal dose):
Single dose: 700-800 maximum
Partial myeloablation (sublethal dose):
Single dose: 600 or less
scid Immunosuppression:
50-250
Note: 1 Gy = 100 cGy = 100 rad
マウスの放射線照射に関する文献
たまたま、以下のようなページを見つけたので、紹介します。
Sensitivity and dose dependency of radiation-induced injury in hematopoietic stem/progenitor cells in mice
マウスにおける放射線照射量に応じた造血幹細胞/造血前駆細胞機能障害
Chang-Ying Guo et al.
Scientific Reports volume 5, Article number: 8055 (2015)
- 成体C57BL/6マウスに1か月間毎日、0, 2,10, 50, 250mGyのガンマ線を照射し、造血幹細胞/前駆細胞の機能を最終照射から2時間後(急性期)と3か月後(慢性期)に解析。
- 10mGy以上の照射では急性期コロニー形成能が著しく低下、250mGy照射では慢性期になっても回復せず。
- 10-50mGy照射では慢性期mixed typesコロニー形成は低下するものの、コロニー総数はコントロールと同等。
- c-kit+幹細胞/前駆細胞において、DNA損傷時の一般的マーカーである53BP1 fociが増加(50, 250mGy照射急性期において)
ヒト造血幹細胞移植前処置時の放射線照射
なんとなく人についても知りたくなったので調べてみました。
造血細胞移植学会ガイドラインを参考にしています。
https://www.jshct.com/uploads/files/guideline/06m_zenshochi.pdf
同種移植における移植前処置の目的は,以下の3点である1)。
・患者の免疫を適切に抑制し,移植片の拒絶を予防すること(免疫抑制効果)
・患者の体内に残存する腫瘍細胞をできるだけ減少させること(抗腫瘍効果)
・患者の骨髄内において移植片の生着を得るために患者自身の造血機能を廃絶させること
今回は以上です。