ワシントン2日目。今日が学会参加は初日です。
本日の学会で印象に残った講義と、ポスター発表についてレポートします。
★「診断エラー学」とは?
診断のミスや遅れを、その医師個人の知識や技術不足とするのではなく、様々なバイアスによっておこるものとして科学的に分析することにって、診断の精度を上げることを追及するという学術分野のこと。
1.現代の身体所見~どのようにその精度を上げるか?~
要約すると、テクノロジーを用いて、初学者とエキスパートの診察能力の違いを数値化して分析しようというものです。若い医師は、自分の診察技術よりもCTに頼ってしまいがちだが、それをテクノロジーでどうにかできないかとのことです。
レクチャーでは内診、直聴診、乳房触診、甲状腺触診などが例として取り上げられていました。
↑右下腹部痛で来た患者。虫垂炎を探しにCT撮るも正常、しかし実は鼠径ヘルニアだった!という症例。身体所見をおろそかにしてはいけないというメッセージを込めた症例呈示。
↑身体所見をしっかりとっていないことによる診断エラーは結構多いよと言うスライド。
↑直聴診練習用モデルを使ったシミュレーション
初学者と専門科で、どのように指の動かし方が違うが、直腸どの部分にどのように圧力がかかっているかなどを科学的に分析している。
↑乳房触診。どこにどのように圧力がかかっているかを専用の機会を用いて分析している。
これは論文にもなっており、NEJMに掲載されています。
Sensor Technology in Assessments of Clinical Skill
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1414210
個人的には、専門科によって特異な診察部位が変わるというのが科学的に分析されていて面白かったです。
たとえば、泌尿器科医が直聴診をすると、前立腺の以上に関しては、学生や他の科の医師より正確に診断できますが、直腸の異常(痔核など)に関しては、学生よりも診断能が落ちしてしまうようです。興味深い内容でした。
2.性別や年齢が診断に与える影響・バイアス
患者が女性であったり、黒人であったり、若かったりすると、診断の精度が落ちてしまうという話。例としては、
など。面白かったものの、バイアスを排除するための具体案はあまり提示されず。
3.Clinical Problem Solving
これは臨床推論セッション。いわゆる「診断あてゲーム」のようなものです。
プレゼンターが症例を提示し、問診内容や身体所見などをもとに診断のエキスパートが、「これの可能性があるのではないか?」などとディスカッションをしていき、最後に答え=診断が分かるというものです。
少しずつヒントが出され、世界的に有名な先生方がそれをもとに意見を出し議論していくさまはなかなか面白かったです。
症例をさらりと紹介…
【症例】29歳女性
【主訴】Gassy abdoman
【現病歴】お腹にガスがたまっている感じ、食欲低下を主訴に来院。1か月間に40ポンドの体重減少有。
【検査・診察など】体温37.6℃ 腹部触診ではmassをふれ、エコーしてみると6cmほどの付属器腫瘤が指摘される。Plt3万ほどと血小板低下あり。
【その後】婦人科診察を待っている間に発熱のため再びERへ。腹水が増加。
甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、感染性心内膜炎など様々な鑑別が挙げられましたが、結論としては、、、肺外結核でした!!MassはTuberculomaだったのですね。
結核は腫瘤を形成し得る感染症として比較的早期から鑑別として挙がっていました。
日本のように結核蔓延国にでないにもかかわらずすごいですね…このセッションは素直に楽しめました。
4.ポスター発表
ポスターはプレゼンが必要なタイプではなく、立っていれば(ぶっちゃけ立っていなくても)OKなタイプです。
フルニエの症例と腹部大動脈瘤破裂に関する2演題を出しました。フルニエに関しては、興味を持って質問してきてくれた方が何人かいました。
忙しすぎず、ちょうど良い程度に人が来てくれてよかったです。昨年は早朝7時くらいのポスタープレゼンだったためか、それほど盛り上がっていないような感じでしたが、昨年に比べるとポスターを見に来る方も多く、そこかしこで質問など行われており、活気ある感じでした。
本日は以上です。