実験プロトコールについて書いていきます。
この目的は、自分の頭の整理・知識の確認の他に、いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」的な、文献や教科書に載っていないけど知ってるとちょっと役立つようなことを記録しておくことです。
正確性には注意を払っておりますが、利用の際はご注意ください。
今回は、細胞の凍結保存についてです。
細胞の凍結保存の仕方
接着細胞の凍結保存方法についてです。293TやHeLaなどがこれに当たります。
※10㎝ dichの場合です。使用するトリプシンや撒く細胞量などは、プレートの大きさによって異なります。
※途中までは細胞の継代と変わりません。青字部分は、先日更新した、「細胞の継代の仕方」と全く同じです。
1.培地を37℃ウォーターバスなどであたためる。(冷たい培地に細胞をさらすとストレスがかかるため予めあたためておく)
2.37℃インキュベーターからプレートを取り出し、クリーンベンチ内へ。プレート傾け、端にたまった古い培地を吸引する。アスピレーターは1点で固定し動かさない。
3.PBS(-) wash: PBS(-)10mlほどを入れて吸引。このとき、接着細胞がはがれてしまわないように、ピペットマンの先をプレートの内側側面につけてゆっくりとPBSを入れる。その後の実験によっては2-3回繰り返す。
4.プレートに接着している細胞を剥がすため、0.05w/v%トリプシン/EDTA 2mlをプレートに入れ、5-10分間37℃インキュベーターへ入れ、インキュベートする。
5.新しい培地10ml程をプレートに入れ、十分に懸濁。
6.Cell count(遠心後に行うことも)
7.遠心 1200rpm 3分
---ここまで継代と同じ手順---
8.上清を吸引し、ペレットをタッピングで崩した後に凍結保存用培地を入れて、懸濁する。※5×106 ~ 1×107 cell/ml程度となるように。
9.凍結保存用容器に500μlずつ懸濁液を入れ、さらにそれを冷凍容器に入れ-80℃で一晩(以上)保存。
※保存容器については次の項で解説。
10.その後、液体窒素にて長期保存。
凍結保存容器について
保存容器は、全く同じものは画像が見つけられませんでしたが、以下のようなものを使っております。
まずこれ↓の中に凍結保存駅液(今回の場合はTCプロテクター)に懸濁した細胞を入れます。
インナーキャップとアウターキャップがあり、自分は正直あまり使い分けてわけてはいないのですが、次のサイトによれば以下のような違いがあるようです。
インナーキャップ型のバイアルは、キャップとバイアルの外径が等しいため、よりしっかりと密閉されると考えられる場合もあります。つまり、同じ温度下においてはキャップとバイアルが等しく膨張するため、よりしっかりと密閉されるということです。さらに、一般的にインナーキャップ型バイアルにはシリコン密封が施されているため、液体窒素に浸しても、液体がバイアル内に侵入することを防止できるとされております。
しかし実際は、液体窒素による収縮は非常に小さいため、密封状態に影響を与えることはありません。
(中略)
インナーキャップ型バイアルが選ばれる大きな理由の一つとして挙げられるのが、保存ボックスに入る本数が多いという点です。インナーキャップの外径はアウターキャップの外径よりも小さいため、標準的なフリーザーボックスに入れた場合、収納密度が19%も高くなります。
出典:技術資料 CryoELITE® クライオジェニックバイアル https://www.n-genetics.com/products/1226/1024/13581.pdf
次にそれを、この↓容器に入れて-80℃で保存します。
この容器を用いることで、ゆっくりと凍結し、細胞にダメージが少ないようです。
凍結保存用培地について
凍結保存培地はいくつか種類があるようです。
細胞凍結用の一般的な培地は数種類あります。血清添加培地としては、次のような成分を含む培地が挙げられます。
- 10%グリセロールを含む完全培地
- 10%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む完全培地
- 50%順応培地+50%新鮮培地に10%グリセロールを含む培地
- 50%順応培地+50%新鮮培地に10% DMSOを含む培地
無血清培地の場合は、一般的な培地成分は次のようなものです。
- 50%順応培地(無血清)+50%新鮮培地(無血清)に7.5%DMSOを含む培地
- 7.5%DMSOおよび10% BSA(細胞培養用グレード)を含む新鮮な無血清培地
出典:Thermo Fisher 「【必読】哺乳類細胞の凍結保存法と解凍法まとめ」
教室ではTCプロテクターを使用しています。
今回は以上です。