先日、作成したレンチウイルスを、-80℃で保存すべきところを誤って液体窒素(-180℃)で保存してしまったという記事を書きました。
そのウイルスを造血幹細胞に感染させてみました。
方法としては、マウスから精製した造血幹細胞をsortingで300cell/wellx10well(96well plate)集め、MOI600となるように撒きました。
※MOI:multiplicity of infection
細胞1個に対するウイルスの数。Titer 1x10^9/mlのウイルス液1ulを10^5個の細胞に感染させたとき、MOI10となる。
ウイルス液注入後、16時間でmedium changeを行い、土日を挟んだ本日観察を行いました。
ウイルスベクターにはmScarletが入っているため、感染した造血幹細胞は赤色に光るはずです。
結果…赤色蛍光が確認できました!
これまでウイルス感染は293T細胞でのみ行ってきましたが、ラボの先輩より293T細胞より100倍は造血幹細胞はウイルス感染しにくい!というお話を聞いていました。
FACSを陽性細胞率の計算はこれからではありますが、蛍光顕微鏡で見た感じではそこそこは入っていそうです。
液体窒素にある程度の期間(今回は1ヶ月ほど)保存してもウイルスベクターは使用できるようですが、今後は保存方法には気を付けたいと思います。
これに関連し、レンチウイルスベクターを用いた造血幹細胞への遺伝子導入に関する論文を少しだけ読んでみました。
(一部要約)
- レンチウイルスベクターは非分裂細胞にtransduceされるが全ての細胞ではない。
- Human progenitor hematopoietic stem cells (PHSC)へのtransduceの際には以下のことが分かっている。
- レンチウイルス形質導入は細胞周期阻害剤aphidocolinによって阻害されない。
- Transduceされた細胞もされてない細胞もDNA量はほぼ同じ→非分裂細胞(N)と分裂細胞(2N)が同じようにtransduceされている。
- Transduceは細胞周期のS期とは無関係に起こる。
- PHSCをサイトカインで48時間培養した際にはtransduction効率が著しく高い。
- MOIが高い場合でもtransduction効率は70%を超えることはない。
- レンチウイルスベクターは細胞周期がG1 or S/G2/Mの細胞に主にtransduceされるが、G0期の細胞へのdransduction効率は1/10ほどである。
- 多くのHSCはG0期にあるため、transduction前には、3-4日程度成長因子による刺激が必要である。
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これを見るとtranduction効率は高くて70%ほどのようです。
測定結果を待ってみることとします。