エピジェネティクスの基礎的現象の1つであるヒストン修飾に関する記事を書きました。
なので、ヒストン修飾関連の記事を書いてみます。
日本の理研からの論文です。
Balan, S., Iwayama, Y., Ohnishi, T. et al.
A loss-of-function variant in SUV39H2 identified in autism-spectrum disorder causes altered H3K9 trimethylation and dysregulation of protocadherin β-cluster genes in the developing brain.
Mol Psychiatry (2021). https://doi.org/10.1038/s41380-021-01199-7
自閉症は近年発症が増加しているようですが、発症機序に関しては不明な点が多く、現在のところ病因に基づいた治療法は存在していない。今回はその自閉症の原因に関する論文。
研究チームは自閉症患者と健常者のDNA検体を用いた遺伝子解析により、SUV39H2遺伝子が自閉症発症に関与しているのではないかという点に着目した。
SUV39H2遺伝子を欠損させたマウスは自閉症と似た挙動を示す。
(基本的な学習能力には問題がないが、予測困難な複雑なルールの転換に適応するのが難しいなどの徴候が見られた→自閉症の中核症状を反映)
研究チームの調査結果によると
1.SUV39H2遺伝子欠損
2.健常者で起きるはずのヒストンH3のメチル化がうまく起きない(メチル化障害)
3.健常者ではOffのはずのプロカドヘリンβ遺伝子群の発現がOnになる
4.自閉症発症につながる
このようになっている可能性が示唆される。
今回、国際共同研究グループは、自閉症の原因として、(1)SUV39H2遺伝子の機能喪失、(2)プロトカドヘリンβ遺伝子群のプロモーター領域のH3K9のメチル化の減少、(3)プロトカドヘリンβ遺伝子群の発現上昇 、結果として(4)神経ネットワーク形成の乱れにつながる可能性、を明らかにしました。また、SUV39H2遺伝子の障害による異常に対しては、ヒト死後脳の解析から生後でも介入の余地の可能性が考えられました。
出典:
既述の通り、病因に基づく治療法がないため、今回メカニズムが明らかになったことで治療法開発に役立つかもしれない。