こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【実験プロトコール】エチジウムブロマイド(EtBr)によるDNA検出

PCR後検体などをアガロースゲル電気泳動したあとにバンドを見たいとき、エチジウムブロマイドで染色を行い、目的のDNA検出を行います。

 

今回は、その仕組みを解説しつつ、電気泳動の流れを示したいと思います。

 

  1. アガロースゲルを作成。
    →作成法は以下の記事参照

    【実験プロトコール】アガロースゲルの作成 - こりんの基礎医学研究日記f:id:teicoplanin:20200128180323j:image

  2. ゲルのウェルにラダーと流したいサンプルを入れる。入れる量は、ウェルの大きさによって異なるが、5-15μlの間程度。ウェルに合わせて微調整。

    ※ゲルローディングダイはだいたいサンプルの1/5程度の量。たとえば20μl/tubeでPCRを行った場合、PCR後のDNAサンプルも20μlであり、ゲルローディングダイは4-5μlほど入れ、ウェルには10μlほど入れる(=アプライする)。

  3. 電気泳動:専用の泳動機にゲルを入れ、TAEで満たし、泳動開始。
    「超実践バイオ実験イラストレイテッド」によると、泳動の電圧は、電極板の距離1cmあたり5V程度で流すとのこと。
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    私は、先輩に教えてもらった100V 25-30minでいつも泳動しています。

    泳動時間は、流すDNAの大きさやゲルの濃度などによって変わってくるため、よくわからないときは時々、流れすぎていないか確認する。

  4. 染色:タッパーなどにエチジウムブロマイドを溶かした溶液を入れ、その中にゲルを入れ、15-20分ほど待つ。
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    このとき、DNAを検出する蛍光試薬であるEtBrが、二本鎖DNAの隙間に入り込み、紫外線を照射すると発行する。
    ※EtBrのみでは、紫外線を当てても発光しない。
    ※EtBr濃度は、蒸留水またはゲル緩衝液中に0.5~1 µg/mlほど。

  5. 観察:トランスイルミネーターなどで紫外線を照射し、バンドを検出。照射時間も実験条件によって異なるが、だいたい1-1.5秒程度。
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    ※ここでバンドが薄いときは…
     1.紫外線照射時間を長くする
     2.EtBr染色を長くする(追加で5-10分程度浸す)
    などの対処をする。

 

電気泳動後、アガロースゲルからDNAを抽出、回収する方法については以下を参照ください。

【実験プロトコール】アガロースゲルからのDNA抽出・回収 - こりんの基礎医学研究日記

 

以上です。上記は「後染め」と言われる方法で、先にEtBrをアガロースゲルに添加しておく「先染め」という方法もあるそうです。

 

これはやったことがないので、どちらがいいのかはわかりません。

 

またEtBrには発がん性があるようなので、取扱い時には手袋必須です。上記のDNAの隙間に入り込む作用によって、DNA複製障害や発がんにつながるようです。しかしWikipediaによると直接の証拠はないようです…。

 

参考:

https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/agarose-gel-electrophoresis.asp?entry_id=14478

http://www.lonzabio.jp/tech/pdf/tech_56.pdf

https://www.yodosha.co.jp/bookdata/9784758107327/9784758107327_column1.pdf