こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

ネトーシス/Netosis

本日は抄読会で話題に上がったネトーシスに関する解説です。

 

ネトーシスとは?

 

Neutrophil extracellular traps(NETs)などとも呼ばれています。※NETには2つの経路があり、そのうちの1つがネトーシスである。

 

アポトーシスネクローシスと異なる「第3の細胞死」と呼ばれている細胞死の形式のことです。

まずこの2つから見てい行きます。

 

1.アポトーシス:「自然死」「自発死」 「プログラムされた死」「細胞の自殺」

制御されたもの、つまり計画的な細胞死であり、あるときが来ると細胞膜や細胞核細胞骨格の構造が変化し(細胞が縮小する)、アポトーシス小体となり、マクロファージのような貪食細胞に貪食される。細胞内に含まれている酵素(たとえば消化酵素のリソソームなど)や老廃物など周囲に悪影響を与える可能性のある物質が細胞外に露出しないため、安全(「炎症」が起きない。)貪食され、消化された成分は再利用される。

例:昆虫の変態、指間の細胞の消失、白血球など血球の死滅

 

2.ネクローシス:「壊死」

細胞が傷ついてしまった結果、予定外に突然しまうこと。血流不全、外傷、火傷などといった誘因により細胞が死んでしまう。アポトーシスと異なり、細胞内の物質、急な細胞死によって細胞外に放出されてしまうため、周囲の細胞に悪影響を及ぼし、「炎症」が起こるきっかけとなる。

 

3.ネトーシス

細菌など外敵(外来微生物)が体の中に侵入した際に起こる。核膜が分解され、核内に終脳れされているクロマチンが細胞内に出てくることとなり、その後細胞膜が壊れ、クロマチンがまるでネット=網のように放出され、細菌などのが外的に絡みつく。絡み付かれ捉えられた細菌はマクロファージに貪食されやすくなり、またその放出され他クロマチン自身にも殺菌作用がある。好中球の、貪食作用、脱下流に加えた、もう1つの武器である。

 

Figure 1

出典:Nature Reviews Immunology volume 18, pages134–147(2018)

 

 

 図↑の上の経路がネトーシスを表している。このNETs形成は、血管内皮細胞を傷害することによって敗血症の病態を悪化させたり(DICや敗血症性shockを引き起こす)、このNETs自体が抗原と認識されることにって自己免疫疾患を引き起こしたりといったことの原因となりうる。つまり急性炎症・慢性炎症いずれにも関与している可能性がある。

 

参考:

https://www.nature.com/articles/nri.2017.105

http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/mcb/old/study/neutrophil-net-formation/index.html