勉強したことのメモです。
RNA干渉(RNA interference=RNAi)
2本鎖RNAと相補的な配列を持つmRNAが分解される現象。これを利用することによって、特定の遺伝子発現をノックアウトすることができる。疾患の治療への応用が期待されている。
遺伝子治療と結果的に似ているが、どこをブロックするかが異なっている。
たとえば、ある疾患Aの原因遺伝子がaだとわかっていて(つまり遺伝子異常aがあることによって疾患Aが発症してしまうと分かっている)、疾患Aを発症させないようにしたいとき、
遺伝子治療:遺伝子を書き換えることで原因たんぱく質が作られるのを押さえ、疾患発症を抑える。
RNA干渉:異常が生じている遺伝子aはそのまま。しかしmRNA→たんぱく質合成と進んでいくのを、mRNAの段階で分解させることで疾患発症を抑える。
出典:北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究所 塚原研究室HPより引用
研究概要 | 北陸先端科学技術大学院大学・マテリアルサイエンス研究科・塚原研究室
上記のセントラルドグマのうち、DNAを書き換えるのが遺伝子治療、mRNAの段階でたんぱく質合成を遮断し機能を抑えるがRNA干渉。
遺伝子を書き換えないまま、その遺伝子が発現したんぱく質が機能することを防ぐことを遺伝子サイレンシングというが、RNA干渉も遺伝子サイレンシングの一部。
(遺伝子サイレンシングには転写型と転写後の2パターンあり、転写後遺伝子サイレンシングでRNA干渉がりようされている。)
※相補的RNAによるmRNA分解機能は生体も利用している。
たとえば、核内のイントロン領域から作られるmiRNA(マイクロRNA)が核から出て行き、mRNAに結合することでタンパク質合成を抑えなる、などのように遺伝子発現調製に利用される。このときのイントロン由来のmiRNAは1本鎖であり様々なmRNAに結合できるが、同じ機能を外来(つまり外から送り込んだ)siRNA(=small interfering RNA)は2本鎖であり、特定にmRNAにしか結合できない。
→特定にmRNAにしか結合できないため上記のように治療に応用できる。
RNA干渉と核酸医薬
DNAやRNAなどの核酸を医薬品として利用する方法が核酸医薬であり、RNA干渉を利用した治療も核酸医薬の1つである。
上記のsiRNAを利用した治療への期待は大きいものの、目的の組織や細胞までどのようにして作ったsiRNAを運ぶかが問題となる。
(siRNAは不安定であり、標的でない場所では毒性を引き起こす可能性があるため)
siRNAを標的細胞や組織に安全に高確率に運搬するDrug Delivery System (DDS)と組み合わせた治療が試みられている。
ナノ粒子を用いたsiRNA運搬
siRNAを運搬する方法としてナノ粒子が1つ挙げられる。ナノ粒子は、従来の方法と比較してサイレンシング効率が高く、安全だと期待されている。
ナノ粒子の例
岡本彩香.「脂質ナノ粒子を用いた核酸医薬デリバリー」2016. より引用
Youngらの"Nanoparticle-siRNA: A potential cancer therapy?"(2016)によると、将来有望な治療だが、まだ運搬方法に問題があり、目的としていない効果などを解決する必要があるとしている。