こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

Harvard ICRT Okinawa 2020に参加して

表題の通り、Harvard Medical Schoolが主催する臨床研究や公衆衛生を学ぶコースであるICRTに(ntroduction to Clinical Research Training–Japan)に参加した感想を記録しておきます。

 

これから応募する方々の参考になれば幸いです。

 

1.応募編

応募は意外にぎりぎりで、10/29開始のところ9/30が締め切り。オンラインだからぎりぎりなのかと思いきや現地でワークショップ開催予定だったときからだいたい開催の1か月前までの締め切りは変わらず。実際に採否が明らかになるのはさらにその後です(今回の場合は応募締め切り後3日ほど)。

飛行機チケットやホテルを用意するとなると普通はもっと早くから動き出さねばなりませんが、実際に現地に行くパターンの場合は、応募や採否決定の前に手配することになるでしょうか・・・。

応募に必要な書類は以下のとおり。

  • オンラインの入力フォーム
  • 英文推薦状(Letter of recommendation)1通
  • 志望理由書(Personal Statement) 
  • CV(履歴書) 

1. はオンライン応募の際に入力する名前やメールアドレスなどのことをさしており、実質的に準備が必要なのは、それ以外の3種類。推薦状は書いてもらうものなので、自分で用意するのは2種類。

NPO沖縄アジア臨床研究連携のホームページから問い合わせると、フォーマットファイルを送ってもらえる。私の場合は、

 

  • 英文推薦状(Letter of recommendation): 前病院勤務の先輩(過去にHarvard ICRT参加歴あり)に依頼。
  • 志望理由書(Personal Statement): 送ってもらったフォーマットを参考に作成。A41枚程度。500語以内との指定だったが、がんばって書いても350語程度にしかならず、それで応募。
  • CV(履歴書): 送ってもらったフォーマットを参考に作成。ネット検索すると英文履歴書の書き方や参考例はたくさん出てくるのでそれを参考に作成。

 

上記で応募し、無事に通過。9月30日応募締め切りで10月2日にはもうAcceptメールが来ました。学費は$7000であり、そのうち$700を前払い、無事参加。

どのくらい落ちるのか分かりませんが、周囲を見ているとほぼ落ちないような・・・。

 

2.ワークショップ編

無事に合格しワークショップが始まりました。本来、沖縄に集結してオフラインでワークショップを受ける予定でしたが、コロナのため全編オンラインとなりました。10/29(木)の夜から11/1(月)朝にかけてといったスケジュールでした。1日中あるわけではなく、日本時間の夜8時ごろから11時ごろまで、朝8時ごろから10時ごろまでの1日2セクションに別れ、それが4日ほど続きました。

 

Zoom講義を聴くのが基本でしたが、ブレイクアウトルームに分かれてのディスカッションや、Zoomの投票システムを利用して問題出題などもありました。

 

講義内容は基礎的なところから始まるので(例えばrateとproportionの違いなど)、それまで統計や公衆衛生に関する知識がほとんどなくてもついていけると思います。先生にもよりますが、英語は比較的聞き取りやすくスライドもありますし、ついていくのはそこまで大変ではありませんでした。

 

またワークショップ終了後には録画された講義動画をあとから見ることもできます。(今回の場合、これはワークショップが全て終了してしばらく経ってからでした。)

 

3.ワークショップ後の課題編

ワークショップ①終了後には、ワークショップ②まで半年ほど時間があり、その間にチーム課題が2つと個人課題が1つあります。またZoom講義と録画講義、それをもとにしたQuizがありました。

 

Zoom講義は月4-6回程度でしょうか。統計解析ソフトStataを用いるので、Stataの使い方や疫学に関する講義などが続きます。Zoom講義はやはり録画されており、後からでも視聴できるのですが、しかしなぜか当日の出欠も取られており、出席状況も修了要件となっています(75%以上の出席が必要)。

 

チーム課題1回目は、各チームで仮想臨床研究を組み、その概要をプレゼンするという内容で、チーム課題2回目は、既存の臨床試験(NEJMにて発表されているもの)の倫理的問題点を考察するといった内容でした。

 

各チームは6-7人程度なのですが、私のチームは日本人4人とアメリカ人1人、フィリピン人1人でした。

 

チーム課題1回目は「高齢者へのメラトニン投与はサルコペニア進行を予防するか?」というテーマで行いました。チーム課題の2回目は、全チーム(計8チーム)同じ論文をテーマに倫理的問題点がないかを検証するような内容でした。いずれもスライド15枚、発表時間8分ほどでした。

 

ちなみに私は2回目の課題のチームプレゼンターを担当しました。チームメンバーが丁寧にフォローしてくれました。スライド15枚は一応私が作ったのですが、アメリカ人やフィリピン人のチームメイトがスライドを1枚ずつチェックし、文法などを直してくれ、またプレゼン練習にもつきあってくれたので、発表に際しての英語的な不安はあまりありませんでした。

 

8分間のプレゼンの後は2人教員からの質疑応答があるのですが、1人目の教員からの質問は問題なく答えられましたが、もう1人の教員からの質問は英語的な問題もあり、うまく答えられませんでしたが、2nd presenterであるアメリカ人チームメイトが助けてくれました。このような感じでチーム課題は乗り切ることができました。

 

個人課題は、与えられたデータベースを基に、各自好きなテーマでデータを解析し、学会抄録を書くというものでした。今回は、ある病院のICUに肝不全で入院した患者のデータベースが課題として与えられました。私は、"Acute kidney injury severity predicts the mortality in intensive care unit patients with chronic liver disease"というタイトルで、ICUに入院した肝不全患者のAKI重症度が患者の予後(死亡率)と関連するかという内容にしました。これも、ここまでの講義を受けていれば、ものすごく難しいものではありませんでした。

4.ワークショップ編その2~修了まで

上記の通りオンライン講義やチーム課題・個人課題などをする期間が約半年あり、その後再び最初にあったのと似た感じのワークショップが5/13(木)~5/16(日)まで4日間ありました。時間帯やZoom講義の進め方等も1回目と同様なので割愛します。

 

やはり全編英語ではありましたが、スライドもありますし、それほどついていくのは大変ではありませんでした。この後半ワークショップでは日本人医師である徳田安春先生の講義や、個人課題の優秀者の発表などもありました。

 

そして最終日の最終セッションは修了式でした。指導してくれた講師らのあいさつ、受講者代表のあいさつなどがあり、その後、音楽とともに受講者1人1人の名前をZoom画面に表示し、修了を祝うという内容でした。後日Certificateが送られてきました。

 

以上で全課程が修了しました。

 

5.感想

やはり公衆衛生に関する体系だった講義を受けられたのはやはりとてもよかったです。

 

情報があふれた時代ですからネットや書籍を駆使すれば1人でも同様のレベルの知識を得られるかもしれません。しかしやはり体系的な勉強は難しいでしょうし、もし大学院に入学して学ぼうと思えば2-4年はかかってしまいます。そこをオンラインで半年間というちょうどいいボリュームとタイムスパンで学べたのはよかったと思います。

 

また他国の様々なバックグラウンドの受講者との交流も刺激的でした。対面ならなおよかったとは思いますが、Zoomを通して、チーム課題を通して、ともに学びコネクションもできたのはとてもよかったと思います。