こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

Apple Watchを利用した健康管理

調べる機会があったのでそのメモです。

 

Apple watchのような着用型デバイスは急速に普及しており、それを利用した健康管理が可能なのではないか?といったトピックです。

 

まずどれくらい普及しているのか?

 

Patterns of Use and Key Predictors for the Use of Wearable Health Care Devices by US Adults: Insights from a National Survey

  • 米国成人の約30%が着用型ヘルスケアデバイスを使用。
  • 若く健康で、裕福で教育水準が高く、技術に精通した成人が多い。

Chandrasekaran R, Katthula V, Moustakas E. Patterns of Use and Key Predictors for the Use of Wearable Health Care Devices by US Adults: Insights from a National Survey. J Med Internet Res. 2020 Oct 16;22(10):e22443.

 

上記はthe National Cancer Institute’s Health Information National Trends Survey (HINTS)のデータだそうですが、成人の30%はかなり多い印象です。ちょっと偏った集団のように思えます。

 

精度はどの程度なのか?

 

Assessing the Use of Wrist-Worn Devices in Patients With Heart Failure: Feasibility Study

上記はFibitとApple watchの精度を比較したという論文。

Fibitというのは知らなかったのですが、Apple watchと似たような感じです。

以下はAmazonのホームページより。

 

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  • 10人の被験者を対象にApple watchまたはFibitをつけ、モニター心電図と比較し、その精度を検証。心不全患者対象。
  • 安静時の脈拍測定には向いている。心不全患者の毎日のモニタリングには適している可能性がある。
  • 運動時の評価はFibitの方が優れている可能性がある。

Moayedi Y, Abdulmajeed R, Duero Posada J, Foroutan F, Alba AC, Cafazzo J, Ross HJ. Assessing the Use of Wrist-Worn Devices in Patients With Heart Failure: Feasibility Study. JMIR Cardio. 2017 Dec 19;1(2):e8.

 

Effects of Motivational Interviewing and Wearable Fitness Trackers on Motivation and Physical Activity: A Systematic Review

 

Apple watchなどの着用型ヘルスケアデバイス、動機づけ面談、自己決定理論ベースの介入が身体活動動機づけにつながるかを検証したもの。より具体的には、座っている時間が長い生活は、様々な疾患につながるため、これを改善するためにはどのような介入が効果的か?といったことを調べる。

この結果、動機づけ面談と自己決定理論ベースの介入は動機づけにプラスの影響を与えるが、着用型ヘルスケアデバイスの効果はまちまち。

 

Apple Watch, Wearables, and Heart Rhythm: where do we stand?

 

心房細動=AfをひっかけるのにApple watchなどのch飼う用型デバイスが有効ではないか?という研究。RCTです。その結果、Af検出感度を上昇させ、one pointの心電図検査より4倍の症例が診断された。

 

Raja JM, Elsakr C, Roman S, Cave B, Pour-Ghaz I, Nanda A, Maturana M, Khouzam RN. Apple Watch, Wearables, and Heart Rhythm: where do we stand? Ann Transl Med. 2019 Sep;7(17):417.

 

私見

まだまだ十分に研究がなされているわけではないようでしたが、ポテンシャルはかなりあるように感じました。特にAfの研究は個人的に大変興味深いです。確かに病院で心電図とっても正常っていうのはよく経験しますが、動悸を訴える人に全員ホルタ―心電図を進めるかというとちょっと難しいところもありますし、Apple watchのようなほるたーよりももうちょっと簡単なデバイス不整脈が同定できればより便利だなと思いました。心疾患や呼吸器疾患の管理にはすごく役立ちそうな気がするので、例えば、どのこかの病院の循環器内科の患者さん全員にApple watchを支給してたりすると、予後が変わったりしないかなーなどと妄想が膨らみます。