抄読会で発表したことのメモです。
以前のショウジョウバエの造血に関する記事はこちら↓
【文献紹介】ショウジョウバエにおける造血幹細胞 - こりんの基礎医学研究日記
Drosophila(ショウジョウバエ)における造血
- ショウジョウバエと脊椎動物の造血は多くの共通点があることが報告されている.
- ショウジョウバエの血球の種類は脊椎動物よりも限られているが,分化・造血の鍵となる伝達経路や転写因子は共通しており,5億5千万年にわたり保存されている.
- ショウジョウバエの造血を知ることは脊椎動物の造血の理解につながる.
Evans CJ, et al. Thicker than blood: conserved mechanisms in Drosophila and vertebrate hematopoiesis. Dev Cell. 2003 Nov;5(5):673-90.
→さなぎとなるとリンパ腺は崩壊し、血球は全身へ循環。
寄生蜂の侵入<ショウジョウバエの免疫応答と血球>
- 寄生蜂のメスは他の昆虫のさなぎや幼虫(寄主)に卵を産みつけ,孵化した蜂の幼虫が寄主昆虫の体を食べつくして成長.
- 寄主に異物が侵入すると血球(白血球に相当)が食作用で対抗.これに打ち勝つと寄生が成功.内部で蜂が成長していく.
寄生蜂は1種類の蜂ではなく、たくさんいる。
出典:「点滴の代表格:寄生蜂」
http://www-agr.meijo-u.ac.jp/labs/nn006/entomol/entomol.parasitic-wasps.html
- ショウジョウバエにおいては2令虫に寄生蜂のメスが卵を産み付ける.
- 普段はごく少数しかない血球であるラメロ細胞が分化誘導され,増加.
- 産み付けられた卵をカプセル化し,メラニン化を引き起こし卵の死を引き起こさせる.
出典:Banerjee U, Girard JR, Goins LM, Spratford CM. Drosophila as a Genetic Model for Hematopoiesis. Genetics. 2019 Feb;211(2):367-417.
さなぎになって以降の造血
- さなぎとなるときにリンパ腺は崩壊し、全身に分散しhemolymph(血リンパ=節足動物の血液)となる。
- 全身に分散した血液細胞は、さなぎのなかで起こる離もんでリングによって生じるアポトーシス細胞を飲み込み、腸管のリモデリング中に生じた細菌を除去する。
- もともとリンパ腺にあった血球の多くは、成虫においては、循環血球となるが、一部は腹壁に張り付き、成体における造血を担うとされているがこの点はさらなる研究が必要である。
Banerjee U, Girard JR, Goins LM, Spratford CM. Drosophila as a Genetic Model for Hematopoiesis. Genetics. 2019 Feb;211(2):367-417.
抄読会中の質問…あまり答えられなかったものを後で調べてみて
Q. 上記の幼虫の造血は一次造血or二次造血?
A. 哺乳類で言うところの一次造血(胎児型造血)・二次造血(成体型造血)という概念をそのまま当てはめられるわけではないよう。しかしさなぎとなった時点でそれまで造血を担っていたリンパ腺は崩壊し、成虫では別の造血系となるので、あえて言えば「胎児型」造血と言えようか?
①一次造血は、体外の卵黄嚢にある血島で行われる造血で、胎生2週間ほどで始まり、ほとんどが赤芽球産生で、エリスロポエチン非依存性である。
②二次造血には、胎児肝造血と骨髄造血がある。胎児肝造血は、胎生2~7ヶ月にかけて行われるもので、赤血球を主体とした造血が行われる。一方の骨髄造血は、胎生4ヶ月頃から始まるもので、間葉系の細胞であるストローマ細胞を造血の場として、造血細胞が増殖・分化することによって造血が行われる。出典:「血液学総論」
Q. 幼虫での造血と成虫での造血は関連している?
A. 上記の「腹壁に幼虫リンパ腺を構成していた血球の一部がはりつき成虫造血の中心的役割を担っている可能性がある」というのを見ると関連していそうだが、ここはまだ研究が不十分なよう。